リディオ・アルボーニ1・夜伽の君は極上の花

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 途端黒い双眸に困惑を見せる雅を見て、リディオは深く溜息をつき、一気に杯の酒をあおった。 「つまんない人生送ってるな」 「え?」 「羨ましいだの言ってるなら、経験してみればいいんじゃないのか?」  ずいっと身を寄せれば、雅は驚いたように座ったまま引く。顎を捕らえ、黒い瞳を覗き込み、リディオは笑みを見せた。 「連れて行こうか」 「あの、どこに…」 「広い世界、見てみたいんだろ? 俺の側にいれば見せてやるぜ」  リディオの紫色の瞳を見つめながら、雅は目を丸くする。だが、それは直ぐに諦めを含む笑みに変わった。 「私はこの世界だけで生きておりますので、そのような世界は…」 「そう言って、自分に枷をしてるのは自分自身だって気付いてるだろ」 「…そうだとしても、私は…」  俯き、傍らの畳を見つめる雅を見るリディオは、小さな声で「籠の鳥だな」と呟いた。 「あぁ、やめやめ。そういう辛気くさいのはやめだ」  軽く頭をかいて雅の杯に酒を注いだリディオは、それを雅へと勧めた。 「一夜の楽しみだ、それ以上は言わん。お前の人生はお前のもんだ、俺は首をつっこまない」 「リディオ様…」 「それと、そのリディオ様ってのも止めてくれ、調子が狂う。リディでいい」 「リディ?」  細い首を傾げる雅に、リディオは嬉しそうに男らしく笑い頷いた。     
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