【第二回】人魔の抗争盛り上がり、儒者は抑止に暗躍す

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 ジリ貧君の地球人類を冷ややかな目で防寒していたのは異種族や魔だけではありません。種族的には同じ人類に属する地球以外の星系の人類もまた同様でした。  彼らは地球人類ほど自然征服欲もなく、十分精霊や他種族と共存していける精神的、もしくは文化的、はたまた歴史的な基盤を持ち合わせていたので、人類多数派である地球人類の振る舞いを良くは思っていなかったのです。 また、魔といえどもそういう人類まで見境なく攻撃対象にはしてはいなかったので、地球人類のように直接利害があった分けでもありません。地球に味方する理由は全くなかった、というのが実態であります。こうした人々への迫害や嫌がらせが地球から発せられた事もありましたが、これを見事抑えきったのが儒者たちのグループでした。どんな方法を使ったのかは誰にも分かりませんが、儒者は地球が何かしようとすると尽くこれを阻止してのけ、敵味方一人の犠牲者も出さずに済ませたのでした。これでまた儒者の評判は高まり、   真に力のある者は、決して他者を傷つけぬ。   国も種族も無関係。悪から弱きを護るのみ。 と謡われて、陰ながら限りない称賛を浴びたものです。  しかし真の公明正大とはどちらか一方だけに肩入れするものではありません。儒者の活動は地球人類抑止のみに向けられた分けではなく、当然の事ながら数多の天才秀才を理不尽にかどわかす魔の方にも向けられました。  そのまま捨て置くには余りに被害者の数は多くなり過ぎたのです。地球人類全体から見れば1%にも満たない規模ですが、それは結果であって、それ以上に阻まれた、つまり、神隠しされずに済んだ事例も多かったのです。そして、宇宙各地の儒者たちはこの結果を重く見て、共通意識として更に魔の活動を抑止する事で合意したのです。  いったん決まると事は迅速に始まりました。  その時もまた、魔の定常業務が発動し、担当者は今度攫うターゲットの確認をしておりました。  時に地球暦でいうところの15830年5月。  処はケスタ植民星。知的生命としては、いわゆる人類が生存しない異種族の星でした。地球から見ると、いわゆる射手座方面にある、金星と同じ位の惑星で、土着の種族には、小国家が各地に乱立して覇を競う、というレベルの文明があった、という所でした。
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