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そもそもこの星土着の文明ではとうてい地球レベルの生活を支える事は出来ず、征服依頼40年以上も経過したこの時でさえ、本土との差は天と地ほどありました。当然移民からの欲求も厳しくなっており、政府としても早急に何らかの成果を出す必要にかられていたのです。
サラはサラで思う事がありました。
『私がこうして乗り出したからは、たちまちのうちに諸問題を解決し、本土にもひけをとらない程の生活を実現させてみせる。でも星都の田舎役人どもに十分な予算と資材を確保出来るのかしら』
彼女の下には手足となって働く研究者チームがつく事が通達されていました。彼女は
『どうせ私の知識やノウハウを盗み出す事が目的だろうけど、盗みきれるのかしら? 私としては、いちいち再教育しなくても済むのだから、どんどん持ち出して欲しい位だけど。なんせ、アイデアなんていくらでも出て来るし』
などと思いつつ、この研究チームとの合流を待っておりました。彼女にしてみれば、既に当たり前になってしまった陳腐な知識や技術について、入れ替わり立ち替わりやってくる研修生毎に、何度も同じ事を教えるのは甚だ退屈で迷惑な事でしかなく、助手としてやってきて勝手に持ち出してくれるならむしろ大助かり、という程度の認識でした。
その無頓着さにはむしろ周囲の方が危機感を感じていて、不用意に情報が流出する事がない様に細かい所で対策が講じられていました。即ち、サラのあの性格をいたずらに刺激して仕事が進まなくなるよりも、彼女は自由に行動させ、彼女に接触した者全般に対して厳しいチェックをほどこす方が簡単で、効率的という判断が下されたのです。このため彼女のセクションに出入りする者には、それは厳しいセキュリティ上のチェックがなされ、ちょっとした不正でもとことん追求され、重いペナルティが課せられました。もちろんサラ自身はそんな事はつゆ知らず、知ったとしてさして関心を呼ぶ話でもありませんでした。ルールが明らかにされている以上、気をつけてさえいればそもそも問題など起きるはずがないというのが彼女の見解だからです。
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