【第一回】人類は宇宙へ躍進し、異種族は異次元で潜伏す。

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 このような当然の帰結が、しかしながら、大多数の者には理解すら出来なかったのです。社会通念とか多数派の意識なんてものは、こうした性格を持つものであり、それに迎合出来ないからといっても何らひけめを感じる必要性はないのです。言論思想の自由などと言いながら、その実一定の枠からはみ出る事を許さない、これが人類の限界なのでしょう。  考える事を放棄した大多数の人々は、「みんな」という決まり文句が出れば、それですべて解決しました。しかしもう一方で、ここから生じる集団暴力に泣かされた少数派の良識ある人々は、陰と言わず日向と言わず、不遇の辛酸を舐め続ける事になったのでした。ただ、注意しなければならないのは、少数派のすべてに必ず真実が宿るというわけではない、ということ。流石人類の浅はかさ。これを勘違いして、単に社会を斜めに見ていきがっている輩が実に多い、というのはまた別な真実。  話を戻しましょう。この様な内情でしたが、地球の勢力圏内は、地球人を頂点に、各種ヒト種と亜人種と、その他の知的生命が階層的に入り混じり、まがりなりにも一定の秩序を成しておりました。  地球人類の手から逃れた精霊族。別次元へと旅立ってそこで平穏を得ています。魔と呼ばれた主戦派の精霊属も、それとは違う別次元に潜み、再起を目指しています。地球人類そのものも、一枚岩ではありません。下の階層で苦しむ者はやはり存在していて、異種族や精霊族を頼って人類社会から抜け出す者は、決して少なくはなかったのです。  効率と機能の時代。それはまた、結果が全ての時代でもありました。技能や才能、財産や権力を持つ人々が優遇されて、その他は言わば歯車と同じ程度の扱いを受ける事が普通でした。繰り返しますが「大切なのは最大多数の最大幸福」の名の下に、地球人類は数を頼みに宇宙各地に進出し、異種族を少数派に追い込んで、自立と誇りを奪い去り、支配を強めていったのです。地球の常識は宇宙の非常識。それこそが彼らの宇宙の常識になっていました。流石の実験者もただただ苦笑するばかり。  さて、一旦は別次元に避難して難を逃れた精霊族。その精霊族に縋ってついてきた異種族と一部人類。彼らの中には横暴の限りを尽くす地球人類に一矢報いようとする志を立てた者もいた事は先にお話した通り。
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