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「まったく、あんたって子は。どうしてそんなに、お転婆なのかしらねぇ?」
「だってさ、玄関が塞がれて、中に入れなかったんだよ。目の前に山があったら登るでしょ、普通」
「表から入れないなら、裏の勝手口を使えばいいでしょうに。わざわざ段ボールを登って乗り越えようなんて、女の子なら考えないわよ。もうすぐ中学生なんだから、少しはおしとやかさを身につけなさい」
びしりと言われ、榎は唇を尖らせた。
榎は外見も性格も、かなり男勝りだ。黒い髪は短くカットされ、服装はいつもトレーナーとズボン。身長も小学生の平均より高めで、初見の相手には必ず、男の子と間違えられた。
外に出掛けては、泥だらけになって野球やサッカーに興じた。親に怒られると分かっている無茶な行動も、平気でやってのけるやんちゃっぷりも、榎が女の子だと周囲が分からない要因の一つだった。
「どーせ、あたしは女の子らしくありませんよ。普通じゃないなんて、あたしが一番よく分かってるもん」
榎はふてくされた。周りから女の子らしく、大人しくしなさいと言われる度に、榎は不機嫌になった。なれるものなら、とっくになっていた。榎だって、女の子らしくなりたいと、憧れや理想をもっていた。
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