第三章 春姫覚醒

2/55
27人が本棚に入れています
本棚に追加
/744ページ
「お前らのほうが、残忍だろう! 罪もない人たちに、悪さばかりして!」  巨木の枝に止まって榎を見下ろし、罵声を飛ばしてくる八咫を睨みつけ、榎も負けじと言い返した。  飛んでくる小さな妖怪たちを避けながら、榎は頭上に向けて剣先を突きだした。  八咫は警戒して、ばさりと大きな翼を広げた。 「いくら手下をけしかけたって、無駄だ、宵月夜(よいつくよ)。降りてこい! あたしと戦え!」  八咫の隣には、太い枝に腰を下ろし足を組む、黒い翼を持つ少年妖怪――宵月夜の姿があった。  切っ先を突き付けて、榎は宵月夜を挑発した。 「俺と戦いたいなら、上まで登ってくればいい。下等妖怪たちを、全て倒してな」  榎の言葉を軽く受け流し、宵月夜は鼻で笑った。 「八咫、魑魅魍魎を、もっと呼び寄せろ」 「御意(ぎょい)! 我ら下等妖怪の名にかけて、宵月夜さまには指一本、触れさせはせぬぞ!」  指示を受け、八咫は嘴の前で翼を合わせ、呪文を唱えはじめた。  呪文に呼び寄せられ、小さな妖怪たちが、どこからともなく集まってきて、再び榎を取り囲んだ。     
/744ページ

最初のコメントを投稿しよう!