第一章 夏姫覚醒

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 わざわざ、本を読んで標準語に直していたのかと思うと、凄い努力だなと思った。  尚且つ、そこまで嫌がるほど、関西弁は格好悪いだろうかと、疑問も浮かんだ。  好き嫌いは、各々の性格の問題だから、とやかくは言えない。榎だって、男勝りな自分の性格を、恥ずかしいと思っているのだから、同じかもしれなかった。  考えを実行に移して、理想を現実にしょうと頑張っている椿のほうが、よほど凄いとも感じた。 「こんな本は、どうでもいいのよ! えのちゃんは、陰陽師の本を見に来たんでしょう!? あったわ、あたしの一番、好きな漫画!」  必死でお茶を濁し、椿は本棚の別の段から、陰陽師の活躍が描かれた漫画を抜き出して、榎に手渡した。  榎は受け取った漫画を、簡単に流し読みした。 「漫画のほうが、難しい本より分かりやすいな」  平安時代の人々の暮らしや、妖怪が現れたときの混乱。加えて、陰陽師が登場して、あらゆる術を駆使して、妖怪を倒していく臨場感。  いつの間にか、榎は本の世界に引き込まれていった。  一気に最後まで読みきり、本を閉じたときには、すっかり安倍晴明の魅力の虜になっていた。 「かぁっこいい~。強いな、安倍晴明!」     
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