第一章 夏姫覚醒

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「素敵でしょう? この前、この本を原作にした、陰陽師の映画がテレビでやっていたのよ! 下のテレビに録画してあるから、一緒に見ない?」 「見る! 早く見よう!」  椿を急かして、榎は階下へと走っていった。 「えのちゃんもすっかり、晴明さまのファンね」  椿は満足げに、榎の姿を見て笑っていた。  * * *  その日の夜。  月麿から召集を受けた榎は、こっそりと如月家を抜け出した。  初めて月麿と出合った山に赴き、月麿が発見した妖怪を相手に、夏姫に変身して、戦った。  何度も戦いを繰り返していれば、自然と陰陽師としての戦い方が身につき、術の威力も精度も上がっていくと、月麿は説明していた。  榎は、専用の武器である白銀の両刃の剣を振りかざし、妖怪を退治した。  もちろん、榎自身は今の戦い方に不満を持ってはいない。だが、技も一つしか使えないし、なんだか陰陽師として、地味だなと考えていた。  テレビで見た、迫力ある演出の陰陽師映画を見たせいかもしれない。派手な光線や煙などは映画の演出だと理解はしているものの、榎もせっかく陰陽師なのだから、格好良く必殺技など、決めてみたいと思った。 「麿。あたしも、安倍晴明みたいに、式神を召還とか、できないのか? どうすれば、できるようになるんだ?」     
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