第一章 夏姫覚醒

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 榎は、月麿に尋ねた。瞬間、月麿の表情が歪み、榎を思いっきり睨みつけてきた。  「安倍晴明じゃと? 伝師家の商売敵じゃぞ、安倍家の真似などせんでよい! 麿たちには、麿たちのやり方があるでおじゃる! ええい、名前を聞いただけで、腹が立つわい。いと、わろし!」  月麿は、怒って、喚き散らした。伝師家は、安倍家と仲が悪かったらしい。 「商売敵か……。同業者からは嫌われているんだな、安倍晴明」  作品中でも、身分の高い人やライバルの陰陽師から疎まれたりしていたが、事実なのかもしれない。出る杭は打たれる、というやつだろうか。それだけ、安倍晴明の実力が凄かった証明にもなるが。 「まあ、人真似なんてしなくたって、あたしはあたしなりに強くなって、妖怪を倒せばいいよな!」  そもそも、そんなに立派だった人の真似をしても、強くなれるとは思えない。榎は考え直して、榎にできる努力をしていこうと決心した。 「うむ! 今後も精進せよ、夏姫!」  月麿も、榎の意見に満足して、相槌を打った。
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