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榎は、鏡に映った姿を凝視した。目の前には、紺色のスカートを穿いた榎が、しっかりと映し出されていた。
「着た! 着たぞぉー!! セーラー服!!」
榎はガッツポーズを決めて大声を上げた。いまだかつてない達成感に溢れ、勝利の余韻がこみあげてきた。
「やっと、着替え終わったー? 長かったねぇ。制服着るのに、時間かかり過ぎだよ」
襖が開き、椿が中に入ってきた。椿も榎と同じ、白い帯のセーラー服を身に着けていた。
「だってさ、生まれて初めてなんだよ!? スカートなんて穿くの。減茶苦茶、緊張するじゃん。明日から毎日、着なくちゃいけないんだよ、似合わなかったら絶望的だしさ」
榎は真新しいセーラー服を勢いよく掴んで、試着するまでにどれだけ強い覚悟が必要だったか、熱く語った。
「心配しなくたって、大丈夫よぉ。スカートの似合わない女の子なんて、この世にいないわ。えのちゃんだって、すっごく可愛いわよ」
椿に励まされるも、榎は鏡に映る制服姿の自分を見て、難色を示した。
「本当に、似合っているのかなぁ。足がスースーする。ヒラヒラが足に当たって、なんだか変な感じだ」
背の高い榎の制服は、特注サイズだった。スカートの丈も、標準のものより長く作られていた。でも、榎にはちょうど良いサイズになっていた。
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