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なんだこの蝉は。
こんなにも大きな声で泣いて。
私にだっていろいろあるんだ。
蝉に負けないように私も泣き始めた。
ゆっくり、ゆっくりと。
毎日毎日、頭を下げて、心を殺して、すみませんと言わない日はないほどだぞ。私は仕事が嫌いだ。
そうだ、私には学もなく根性もない。
やれる奴はやればいいさ、私は私の出来ることしかできないんだよ。
夢を追いかけて東京に来て、そして諦めた。
いろんな事情があったにせよ、私は諦めたんだ。
目頭は熱くなり、握りしめた手にあるタバコの箱はぐしゃぐしゃになっていた。
汗で身体中がベタついているのがわかる。
Tシャツが体に磁石のようにくっついて気持ちが悪い。
蝉の声と私の声は喧嘩のように言い合っていた。
きっとお隣さんから苦情が来るだろうが、そんなこと今は考えられなかった。
ただただ感情のままに溜め込んでいたものを吐き出していた。
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