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今日は風が強い。
今年の正月はよく晴れて、初詣に行くにはちょうどいいが、走るのは大変そうだ。
追い風ならいいが向かい風だと、この風速ではキツい。
とっくに陸上はやめたのに、未だに俺はそんなことを考える。
何年経っても、あの頃の記憶は鮮明だ。
こんな風の強い日は高跳びのバーが落ちるから、1年生が分厚い緑のエバーマットをやっとこさ運んだところで、今日は高跳びは無理だと先輩の声がかかる。
「何だよー。」
がっかりした声が一斉に上がり、エバーマットをまた体育倉庫に運び入れると、高跳びの俺たちはハードルなどの他のチームに混ぜてもらいに走ったものだ。
軽やかにバーを飛び越える先輩の姿に憧れた俺は、高跳びのチームに入ったものの、記録が伸びずに悶々としていた。
そんな中学1年の冬。
俺はあいつに出会った。
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