国王陛下はご在宅ですか?

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 私が生まれたとき、母はせっかくの女の子だから、可愛いお洋服を着せて、一緒にお買い物して、お料理を教えたいと願ったらしい。  しかし、そんな母の願いに反して、私は、それはそれはお転婆な娘に育った。  幼い頃、母は私に強引に絵本の読み聞かせをした。綺麗で可愛いお姫様の物語。お姫様に憧れなさい、ということだったのだろう。  けれども、母はわかっていない。  物語の末の姫様は、大体が聡明で優しくしておしとやかだが、それは彼女の兄達が優しいからだ。年の離れた兄が居て、甘やかして守ってくれている。  現実は違う。年子で続いている三人の兄達は、私を可愛がったりしなかった。別にいじめられていたわけでもないが、甘やかしたりはしなかった。  それでも私は兄達が好きで、よく兄達と一緒に怪獣ごっこなんてしていた。お菓子の取り合いはいつだって全力の殴る蹴るだった。おしとやかに育つ訳がない。  そんな男勝りの性格で、口も達者だったから友達に嫌われることも多かった。でも、懐かれることも同じぐらい多かった。イジメっ子とかにも立ち向かっていったりしたから。  実はあれ、正義感にかられてやったわけではなく、年上の兄には勝てなくても、同い年なら勝てるだろうかっていう実力試しだったんだけど、それは墓場まで持って行く秘密だ。  彼も、勘違いして私に懐いた一人だ。私のあとをついてまわっていて、鬱陶しい時もあった。自分からいじめっ子にかかわって、結局泣くところもうざかった。でも、ぶっちゃけ、見た目だけなら美少年だったから悪い気はしなかった。人に好かれることは、不快ではなかった。  彼は私のあとをついてまわり、私の我が侭を聞いてくれた。掃除当番を代わることも、お菓子をくれることも。あまつさえ、 「僕、ナーちゃんと結婚する!」  なんて言って、さらにからかわれたりもした。私は彼の前ではお姫様よりも、強くて権力のある女王様として君臨していた。
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