夜の密会

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「主にね。あれは私の側に必ず控えるから、二人きりで執務をしている時なんかに話が出るんだ。二人きりで旅行に行ったのだろ?」 「…はい」 「招かれて奴の部屋で飲んだり、泊まる事もあるとか」 「…はい」 「看病したりされたりの仲だとも聞くけれど」 「……はい」  全てが事実なだけにぐうの音も出ない。だが問題は、それがどのような身振り手振りで語られたのか。あの人の事だ、誇張はされていそうだ。 「あの頑固者を揺るがす者が現れるなんて、楽しいじゃないか。いつもとても楽しく聞いているよ」  うん、素知らぬふりで仕返しをしよう。そう、ランバートは密かに決めたのだった。 「カール、あまりランバートをからかうな。後でオスカルがこっぴどくやられそうだ」 「それもいいじゃないか。あれは自分の恋人の事は何も言わず、他人の事ばかりを話す。そうだランバート、あれと恋人はどのような関係なんだい? 水を向けてもまったくなんだ」  わくわくした様子で問われるのだが、これにはランバートも答えられない。  オスカルを庇うのではなく、エリオットを庇うからだ。恥ずかしがり屋のエリオットは未だ交際の事実を一部の人間にしか明かしていない。公になるのを拒んでいるのだから。     
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