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――昨夜
ランバートは夕食も終わった時間にクラウルの執務室に呼ばれた。
執務室に呼ばれたのだから、当然仕事だろう。だが、暗府の仕事がランバートに回ってくるのは珍しい。前に一度、ラーク迎賓館への潜入調査はあったがあれは仕方なくだ。普段はあり得ない。
何よりファウストが暗府の仕事に関わる事をよしとしない。彼の許可なしに他府の仕事を手伝うような事は基本的にはしないのだ。
暗府執務室を訪ねると、中にはファウストもいた。黒髪二人というのはなんとも迫力と威圧感がある。明かりも半分落としたような室内では、余計に怖かった。
「あの…俺何かしましたか?」
思わず先制でそう問いかけてしまう。それに、上官二人は苦笑して首を横に振った。
「実はお前に、少し頼みがあってな」
気苦労を感じる弱い笑みを浮かべたクラウルがランバートをソファーへ促す。戸惑いながらファウストを見ると、彼も静かに頷いてくれた。
ソファーに座り、コーヒーを飲む。クラウルは紅茶よりもコーヒー派だ。団長達の中では唯一だろう。
対面に座ったクラウルは、珍しく歯切れが悪い。しばし逡巡した後、大きく溜息をついたりもして、それでようやく話始めた。
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