夜の密会

3/14
432人が本棚に入れています
本棚に追加
/36ページ
「実は、明日の夜にとある人に会ってもらいたい」 「とある人?」  妙な不安があるのは、いつも明快な上官の苦悩を見ているからだろうか。この人がこんなにも悩み抜いて口にするのだ、普通の人に思えない。 「あの、それはどのような…」 「それは今は言えない。場所も明かせない。目的も明かせない。更には話した内容や相手について団長以外に話す事も許されない」 「あの、本当になぜ俺なのでしょうか?」  よほどの相手だろうが、そんな人物が一体なぜランバートに会いたいのか。とてもじゃないが不安ばかりだ。  戸惑って隣のファウストを見るが、黙って頷くばかりだ。 「不審人物じゃない。身元もはっきりした人だ。ついでに危害を加えられる事も、怪しげな取引を持ちかけられる事もない」 「なのに秘密なのですね」  クラウルが静かに頷く。  ランバートは悩むが、考えると悩むことが間違いだ。おそらくこれはクラウルとファウストの間で既に話がついていて、拒む事の出来ない案件なんだろう。 「分かりました、お受けします」  抵抗するだけ無駄だろうと思い、ランバートは黙って受ける事にした。     
/36ページ

最初のコメントを投稿しよう!