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「実は、明日の夜にとある人に会ってもらいたい」
「とある人?」
妙な不安があるのは、いつも明快な上官の苦悩を見ているからだろうか。この人がこんなにも悩み抜いて口にするのだ、普通の人に思えない。
「あの、それはどのような…」
「それは今は言えない。場所も明かせない。目的も明かせない。更には話した内容や相手について団長以外に話す事も許されない」
「あの、本当になぜ俺なのでしょうか?」
よほどの相手だろうが、そんな人物が一体なぜランバートに会いたいのか。とてもじゃないが不安ばかりだ。
戸惑って隣のファウストを見るが、黙って頷くばかりだ。
「不審人物じゃない。身元もはっきりした人だ。ついでに危害を加えられる事も、怪しげな取引を持ちかけられる事もない」
「なのに秘密なのですね」
クラウルが静かに頷く。
ランバートは悩むが、考えると悩むことが間違いだ。おそらくこれはクラウルとファウストの間で既に話がついていて、拒む事の出来ない案件なんだろう。
「分かりました、お受けします」
抵抗するだけ無駄だろうと思い、ランバートは黙って受ける事にした。
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