432人が本棚に入れています
本棚に追加
そんな事で、この屋敷だ。宿舎から小さな馬車に乗せられ、当然窓には黒く厚いカーテンがあり外が見えない状態にされて連れてこられた。
「悪かったな、強引で」
「いいえ。あの、ここでならお会いする方について聞いてもいいのでしょうか?」
ここまで来たならどうせ会うのだから構わないだろう。そう思ったが、蝋燭に照らし出された人は苦笑するばかりだった。
「奥の扉を開ければ分かる事だから、待ってくれ。俺も口止めされているんだ」
この人に口止めするような相手とは、誰なんだろう。ますます疑問が募ってくる。そうしている間にも二人は奥の扉の前に立っていた。
クラウルが扉を開ける。
室内は柔らかなランプの明かりが照らす部屋だった。応接室なのか、大きめのソファーセットに暖炉、分厚いカーテンがかかっている。
そのソファーの一つに男が座っていた。
柔らかな輝きのあるアイスブロンドが顎の辺りで揺れている。向けられる新緑の瞳は柔らかく穏やかな笑みが見えた。静かで穏やかな顔立ちは整っていて、どこか逆らえない迫力もある。
最初のコメントを投稿しよう!