夜の密会

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 普段は民の前にも滅多に出ない皇帝の顔を正しく認識出来ている者は少ない。ランバートも昨年末に近衛府の手伝いで皇帝主催のパーティーに出席していなければ正しく認識できなかっただろう。  そんな人が、実に無防備な様子で目の前にいる。臣下以下の一般兵士に過ぎないランバートに、まるで友人のような眼差しを向けてくる。 「ランバートは奴に似ていないな。おかげで親しめそうだ。これで奴に似ていたら、私はまず小憎たらしい目で君を見てしまいそうだった」 「父が大変失礼をいたしております」  別の意味で謝りたい気持ちで、ランバートは深々と頭を下げた。 「まずは座ろう。ほら、カールも」 「そうだね」  何がどうなっているのか全く説明されないまま、ランバートはクラウルに引きずられるようにソファーに座る。対面にはカーライルが座り、やっぱりニコニコしている。 「改めまして、カーライル・フランドールだ。今ここにいる間だけは、カールと呼んで欲しい」  そう言われても、それはもの凄く不敬な振る舞いだ。戸惑ってクラウルを見るが、彼も頷いている。ならば従わないのも不敬。意を決してランバートは頷いた。 「ランバート・ヒッテルスバッハです。父が大変ご無礼をいたしている様子で、本当に申し訳ありません」 「君の行いではないから、気にしないで。それに、あれに腹が立つのは正論だから。ほんと、痛いところを突くんだよ君の父は」     
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