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「すみません…」
こんなに胃の痛い事はない。しかも自分の事ではなく父親の事だ。普段どれだけ失礼してるんだ。親じゃなければこの後絞めに行きたい所だ。
「でも、あれも国を思って言う事で、そこに私欲はない。だからこそ議論は激しくなるし、思いをぶつけ合えば悔しさや歯がゆさを感じてしまう。私はまだ若い王で、あちらは熟練の臣だ、勝ち目は薄い。だがそうして出す答えはいつも満足している。憎らしく思うのも、私の未熟さ故だよ」
温かく肩を叩かれて、子としては嬉しい言葉を貰う。近くで見た新緑の瞳に、ランバートはふにゃりと緩く笑みを浮かべた。
「うん、綺麗で可愛らしい部分がある。あの男め、こんな息子を隠していたとはな」
「いえ、そのような事は…」
「ファウストが落ちかけているというのも、これなら納得がいく」
「……はい?」
腕を組んでうんうんと頷くカーライルに、ランバートは目をぱちくりした。思わず素の自分が突っ込みを入れてしまいそうになり、それをどうにか止める事が出来た。
「ファウストをたらし込んでいるのだろ?」
「違います!」
「そうなのかい? オスカルがしきりに話しているよ。二人はとても仲が良くて、ファウストは陥落寸前だと」
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