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システムキッチンの台に、今日買った食材を並べた。軽く袖を捲って、野菜を洗おうとしていた。床に置いてあるバッグの中で、滅多にならないスマートフォンが震えているのに気づいた。
ほぼ、誠からしかかかってこない。時間帯からして、早く帰れないという連絡かもしれない。
『ああ、綾音、ごめん』
かなり焦っているのが声からもわかった。
「別に、気にしないで」
『え? 知ってたのか?』
誠が、少しきつめの口調で返してきた。
「遅くなるんでしょ?」
誠の仕事についてはほとんど知らないけれど、何か、トラブルを抱えているのかもしれないと思った。
『違うんだ。今から、すぐに帰る。食事を一人分多めに作って欲しくて』
「え?」
誠が、家に人を連れてきたことはない。私が、人とうまくコミュニケーションをとれないと知っているからだ。
『もう定時だから、今から帰る。量さえ足りれば、メニューはなんでもいいよ』
「待って、誰が来るの?」
誠が『うーん、ごめん、ここでは言えない……』と言った。
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