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「数ヶ月前から、頻繁に脅迫状が届いていて……内容が、段々エスカレートしてきたんだ」
大輝ほど知名度があると、こういう危険にもさらされるのだろう。
「今、捜査が入ってる。どちらにしてもしばらく海外へ身を隠そうって話になっているから、その準備が整うまで置いて欲しいんだ。ここなら、誰にも知られていない」
誠が私の顔をみた。誠は、大輝を匿いたいのだろう。私は頷いた。こんな状況の大輝を、追い出すなんてことはできない。
「悪い。同業者かもしれないし……事務所の人間も信じられなくて」
精神的に、随分追い詰められているのは、わかった。
「おかずは三人分作ってあるから」
食べられるかはわからないが、一応声をかけた。
誠が立ち上がり「着替えてくる」と言った。
リビングに、大輝と二人きりになった。
「綾音……」
大輝に名前を呼ばれただけで、息苦しくなるほど鼓動がはやまった。
「お前も誠も、変わってないな」
大輝は、少し寂しげに笑った。
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