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誠に声をかける。
「早いな」
大輝も入ってきた。
「疲れてるだろう。早めに休めば?」
大輝は頷いたあと、テーブルの上に置いてあるコーヒーカップを手に取った。立ったままで飲んでいる。
「部屋、借りるな。少し一人で考えたい」
「自由にしたらいいよ」
大輝は「悪いな」と言って、荷物を持ってリビングを出て行った。
「僕が先でいい?」
いつもそうしているのに、誠に確認された。私は頷いた。
自分で誘っておきながら、少し憂鬱になる。こうして、大輝とまた関わりを持ってしまったことで余計に、急がなければならない気はした。
誠がお風呂に入ってすぐに、大輝がリビングに出てきた。
「ここの住所教えて」
咄嗟に、知りたい理由は何かと疑問に感じ、返せなかった。
「通販で、必要なものを揃えたい」
大輝は、私の警戒を読み取り、理由を教えてくれた。教えると、手に持ったスマホで入力した。
「俺の名前だと……綾音宛にしてもいいかな?」
大輝は本名で俳優業をしているから、うちにとってもその方が良い気がした。
「そうして」
「わかった。中村……」
大輝は言葉を切った。
私は、息がつまり、喉元を手の平で覆った。
「今は、森本か。まあ、綾音宛にくるように注文するな」
大輝は、言い残してリビングを出て行った。
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