2059人が本棚に入れています
本棚に追加
扉が閉まるのを確認できてから、息を吸い込んだ。
もし、私が中村のままでいたとしても、大輝とどうなれるわけでもない。
涙が零れてしまいそうで瞬きをできずにいた。唇が震える。私は奥歯をかみしめた。
誠をこれ以上、裏切るわけにはいかない。
誠がお風呂から上がった気配がする。私は、テーブルの上に残ったカップをシンクに下げる。洗い物をして気分をかえることにした。
カップを洗っていると、誠がキッチンをのぞきにきた。
「あがったよ」
私は顔を向けずに頷いた。
「寝室で待っておいて」
「わかった」
誠は、いつだって私に気を遣ってくれる。今も、私が動揺していることをわかった上で、そっとしてくれている。
はやく体を洗ってしまいたくて、少しだけの洗い物を中途でシンクに残しバスルームへ移った。
私という女は誠のものであると自分に言い聞かせるために、今すぐ誠に抱かれたかった。
最初のコメントを投稿しよう!