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 扉が閉まるのを確認できてから、息を吸い込んだ。  もし、私が中村のままでいたとしても、大輝とどうなれるわけでもない。  涙が零れてしまいそうで瞬きをできずにいた。唇が震える。私は奥歯をかみしめた。  誠をこれ以上、裏切るわけにはいかない。  誠がお風呂から上がった気配がする。私は、テーブルの上に残ったカップをシンクに下げる。洗い物をして気分をかえることにした。  カップを洗っていると、誠がキッチンをのぞきにきた。 「あがったよ」  私は顔を向けずに頷いた。 「寝室で待っておいて」 「わかった」  誠は、いつだって私に気を遣ってくれる。今も、私が動揺していることをわかった上で、そっとしてくれている。  はやく体を洗ってしまいたくて、少しだけの洗い物を中途でシンクに残しバスルームへ移った。  私という女は誠のものであると自分に言い聞かせるために、今すぐ誠に抱かれたかった。
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