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よく眠れないままに朝を迎えた。
起きだして、お弁当と朝ご飯を作る。誠は、昨日仕事を残して帰ってきたためいつもより早く出ると言っていた。
自分一人でとる昼食は、簡単に済ましていた。食パンは常備してある。簡単に食べて出られるように、今朝はホットサンドを作ることにした。
おおかたの準備ができた頃に人の気配がして振り向いた。
「おはよう」
大輝が立っていた。
「のどが乾いて」
大輝はいつも牛乳をパックから飲んでいた。
「牛乳は今、切らしてる」
「俺って、まだ、牛乳のイメージか。一時期、スポドリのCMもしてたのにな」
大輝が笑った。そのCMが流れていた時期には、まだ、大輝の姿をみられる精神状態ではなかった。
「水でいいよ」と言って、キッチンに入ってきた。コップを用意して渡す。
「冷蔵庫にミネラルウォーターが入ってる」
「これでいい」
水道水をコップに注いだ。
「愛妻弁当ってやつか」
できあがったばかりでまだ蓋をしていない弁当箱をみて言った。
「余ってる卵焼き食べて良いか? みたら腹が減ってきた」
大輝は私の答えを聞かずに、まな板の上に残った卵焼きを摘まんで口にいれた。
「かわってない」
卵焼きの味は、そう変える物ではない。しかし、この味は、大輝の好みに合わせたままだった。
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