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 今はもう、胸も痛むほどではない。  大輝と別れてから十年が過ぎた。  あの頃の私はまだ子供で、大輝しかみえていなかった。  大輝への想いや、大輝との行為は、言葉にしか変換できなくなった。  大輝さえいれば他はすべて滅んでもいいと思えた。恥ずかしかった。痛かった。死んでもいいと思った。二人きりになれば、狂ったように求め合った。  ほとんどが、衝動だった気はする。  私と、大輝と、誠は、小学生の頃から、よく一緒にいた。その当時売りに出された住宅街の一区画で、私たちの家は三軒並んでいた。誠が中学受験をして私学へ進学したので、三人で過ごす時間は減ったが、それでも時々は私の家に集まって、誠に勉強を教えてもらうこともあった。  決定的に、三人のバランスが崩れたのは高校へ入ってからだ。  大輝はもともと整った顔立ちをしていたけれど、その頃、急激に身長が伸びた。  途端に、同じ学校の女子から注目をあびた。  大輝は、いつも私と一緒にいた。それでも、告白してくる子が後を絶たなかった。取られるかも知れないという危機感で、私は、大輝への恋心を自覚した。
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