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弄ばれているのがわかっていても感じてしまう。
真っ直ぐな欲望が、愛情とは違うことも今はわかっている。
十七、八の頃に、汗にまみれながらお互いを求め合った時間があった。
これから先、二度と二人の時間が交わらなくても、大輝も同じように思い出してくれている気がしていた。
大輝は、私を特別に思っていたと言ったけれど、すべてが幻想に過ぎなかったと気づいたのだろう。
愛情などなくても、セックスはできる。それは私の体に空いた穴が、男を受け入れるようにできているからだ。今までもそうしてきた。大輝とつきあっていた頃でさえ同じだったのかもしれない。
私は、ただの穴だ。
どうして生き延びてしまったのだろう。
何度も死のうとした。親も誰も知らなかったから、誠はできるかぎり私のそばにいてくれた。私があんなことにならなければ、予定通り医学部に進んで、今頃、医者になっていたはずなのに。
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