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JST/20XX.12.31.16:45 Yokohama.
ごく普通のスーペリアツインの部屋。立地柄、カップルや家族向けのせいか風呂も広く眺めも良い。浴室からも夕焼けに染まる海が見えた。
「生き返った…」
しみじみと呟く一哉に、諒一が拗ねる。
「それはさすがに大袈裟すぎだろ…」
「いや、案外真面目に凍え死ぬかと思ったわ俺」
「悪かったって…」
「お前は寒くなかったのかよ。朝からあんま調子良くなさそうだったし、風邪とか引かねぇようにちゃんと暖まれよ?」
湯船から覗く諒一の肩へと、一哉は甲斐甲斐しく湯を掛けた。
「体調が悪い訳じゃなかったんだが…」
「じゃあなんだよ。忙しかったのか?」
「昨夜(ゆうべ)なかなか寝付けなくて…」
「はあ? 繊細な諒一様は不眠症って訳か」
揶揄うように言う一哉に、だが諒一は顔を赤くして俯いた。ぼそぼそと、聞き取りにくい声で短く言う。
「楽しみで…」
「っ…」
揶揄ったつもりがまんまとカウンターを喰らい、一哉が湯の中にブクブクと沈み込む。思わず熱くなった顔はもちろん逆上せた訳でなく。
―――どんだけ天然なんだよコイツ…。
昔から真面目で素直で、どこか天然で、けれども妙なところで意地っ張りな一哉の幼馴染は、幾つになっても変わらない。九年もかけて弁護士としての実績を積み上げ、再び諒一は一哉の隣に立った。
”好き”だった気持ちを九年前に押し殺し、極道の跡取りになった一哉の目の前に現れたのは、好きだった頃と何も変わっていない幼馴染だ。
いい加減息苦しくなって顔を上げた一哉の腕が、諒一へと伸びる。肉体労働など一切した事のない細い肢体を引き寄せて、一哉はあっという間に諒一を腕の中へと囲った。
「一哉…っ」
「そんな事言われたら寝かせたくなくなんだろぅがバカ」
「寝ろって言ったくせに…」
顔を真っ赤にして呟く諒一の唇を、一哉のそれが覆う。
「無理。ちゃんと起こしてやっから…一回だけ…」
お湯の中で一哉が手を伸ばせば、既に硬く勃ちあがった諒一の雄芯が指先に触れる。含羞を帯びた諒一の表情が、堪らなく色っぽかった。
広い湯舟の中で、一哉が諒一の腰を跨ぐ。雄芯を擦り合わせながら後孔を解していれば、男にしては細い指をした諒一の手が屹立を握り込む。両手で一生懸命二人分の雄を擦り上げる諒一が一哉は愛おしい。
「かず…や…」
僅かに上ずった声で名を呼ばれ、一哉は一度上げた腰をゆっくりと落としていく。僅かに引き攣れる襞に、諒一の眉間に皺が寄った。同時に僅かに引かれる諒一の腰を、一哉の手が優しく撫でる。
「痛いか?」
「違っ……一哉が…」
「平気だから、腰引くんじゃねぇ…よ」
「ん…っ」
こくりと頷く諒一に口付けを落とし、一哉は自ら雄芯を飲み込んでいく。腹を満たす質量が、そのまま一哉の心も満たしていくようだった。
「っぁ、諒一…っ」
「一哉…、綺麗だ…」
細い指先が頬のラインを辿り、唇に触れる。吐息とともに僅かに歯列を開けば、遠慮なく唇をこじ開ける指を一哉は迎え入れた。同時に緩く突き上げられて、一哉は気持ち良さに嬌声を零す。
「ん…ぁっ、りょ…ぃちっ」
「気持ち良い?」
「ぃ…良い…っ、もっと…抉って…ッ」
「うん」
咥えたばかりの指を引き抜かれ、喪失感を感じる暇もなく腰を掴んで後孔を穿たれる。ばしゃりと派手な水音が行為を自覚させて、一哉は快楽に溺れていった。
「はっ…ぁッ、イ…きそ…っ」
「俺も…出してい…?」
「んっ、中…欲しっ」
「一哉…っ、……一哉ッ、っぃ、―――…っ」
腰を掴む細い指先を僅かに皮膚へと食いこませ、最奥に突き入れた雄芯を諒一が震わせる。同時に欲をお湯の中に吐き散らした一哉は、薄く開けた視界で諒一の端正な顔を見つめた。ともすれば苦しそうにも見える表情は艶めかしくて、危うくまた下肢へと熱が集まりそうになる。
「ホント…凶悪過ぎんだろお前…」
ありったけの自制心を総動員して腰を上げた一哉は、そう囁きながらこつりと額を合わせたのだった。
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