第3章

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椅子に座り化粧ポーチからメイク道具を取り出しすと、鏡に幼さ残る私が映し出される。 「あの日の私はもういない。私は大人になったの」 まるで呪文をかけるように呟き、メイクを施した。 全てが終わるとキリッとした私が鏡に映る。 「よし。……ふぅ。急ごう」 ここへ来て色んな感情に飲み込まれそうな気持ちを落ち着けるために、メイクをした“私”を見つめ深呼吸をした。 高城さんの元へ戻り、タクシーへ乗り込むと宿泊先の名前を伝え一息つく。 特に会話をする事なく進んで行くタクシーはスイスイと道を走りあっという間に目的地へ着いた。 「ありがとね。また何かあったらここへ電話してくれれば俺がくるからね」 気の良さそうなタクシーのおじさんから名刺を渡され、無造作に鞄のポケットへ突っ込んだ。 特段良い運転手さんだったわけもなく、また個人的に呼ぼうとは思わなかったからだ。 「さて、荷物預けて取材にいくか」 タクシーから下ろした荷物を抱え宿泊施設の自動ドアをくぐる高城さんを追うように、私は小走りになって後をついて行った。
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