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『美羽ー!』
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ハッ!!!
突然名前を呼ばれて目を覚ます。
「……夢、か」
いつの間にか眠っていた私は、ベッドへ潜り込むと再び目を閉じた。
しかし、私の名前を呼んだ声が頭から離れない。
少しの間眠ろうと努力してみたが1度覚めてしまった目は中々眠りに就こうとはしてくれなかった。
仕方なく私はベッドから起き上がると冷蔵庫から水の入ったペットボトルを取り出し、口にする。
「ふぅー……」
ジメジメとしたこの暑さで渇いてしまった喉を潤し、窓の鍵を開ける。
「エアコン、いつの間にかタイマーで切れてたんだ。だから暑くて起きちゃったのかな」
タイマーがチカチカと窓を開け、外を覗くと心地良い風が入り込んできた。
「……旺ちゃん」
都会の夜の街明かりを見下ろしながら呟くその名前はひどく懐かしく、私の心の奥を燻らせた。
5年前のあの夏の思い出を
私はきっと
なかった事にしたいのだ。
何故なら
あんなに思いきった行動はもう2度と出来る気がしないし、
私の初めての淡い恋は想いも伝える事のないまま
“そこ”に置き去りされてしまったから。
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