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『芹沢。…芹沢!』
「ん〜…」
誰かに呼ばれる声で目が覚めた。
朝が苦手な私は寝坊した挙げ句、いつの間にか眠ってしまったようだ。
「…あっ!す、すみません」
『まぁ別にいいよ。そろそろ着くぞ』
高城さんに言われよく聞くと機内アナウンスが鳴っていて、あと20分もあれば熊本空港に着くそうだ。
降りる準備…といっても飛行機に乗り込んで早々うとうとと眠ってしまった私は特に鞄から何かを取り出した訳でもなく準備するものは無かった。
それに気付いたのか高城さんが横目でチラリと私を見て呟く。
『…顔』
「へっ?」
『よだれだけ拭いておいた方がいいんじゃないか』
「えっ?えっ!?」
慌てて口の周りを手で覆いペタペタと確認して触るが乾燥してしまったのか涎の気配はない。
『くっ…嘘だよ』
驚いた私は口をあんぐりと開け、目を限界まで開き高城さんを見た。
『そんなに慌てるとは…』
声を殺すように笑う高城さんを見る目が次第に細くなっていく。
「女性相手に失礼ですよ」
『悪い悪い』
そうこうしているうちに飛行機は無事着陸し、荷物を受け取った後ラウンジへと移動した。
「お気遣いありがとうございます…」
高城さんはラウンジで待っているから化粧室へ行ってきていいと言ってくれたので、急いで向かった。
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