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そして駅構内から出る最後の改札はユニフォーム姿の客で溢れ返っていた。
祐羽はこの押し合いの波に負けないぞ!と覚悟を決めたが、九条と部下のお陰で改札前が左右に見事綺麗に分かれた。
おおっ…!
思わず声が漏れそうになる。
目を丸くしながら、祐羽はそそくさと改札を抜ける。
そして、客で埋め尽くされた赤い海の球場への道とは反対側に九条の迎えの車が待機していた。
真っ昼間に黒の高級車が数台。
強面の男達が待機しているのは、目立って仕方ない。
颯爽と歩く九条は、どこか外国映画に出てくる俳優か何かに見えるだろう。
ただひとつ、隣に場違いな小柄な人間が付き添っていることが違和感を生んでいた。
僕、なんか別の意味で目立ってない?
「お疲れ様です」
その声に祐羽は「お世話になります」と頭をぺこりと下げた。
迎えに来た男達の声に九条は返すことなく車に乗り、それに続いて祐羽も促されて乗り込んだ。
祐羽がシートに座って前を向いたのを確認した眞山が紹介したい人間がいると言った。
「今度から月ヶ瀬くんの専属の運転手になる柳です」
そう紹介されて運転席を見ると、思ったよりも若い男が振り向いた。
「柳 功矢(やなぎ こうや)といいます。これから付かせて頂きますので、どうぞ宜しくお願いします」
堅苦しい挨拶とは違い見た目は今時の若者といった感じだが、中瀬とはタイプが違う。
中瀬が洋なら柳は和だろう。
イメージ的には眞山の様な感じで、カッコ良く
真面目な落ち着いた印象を受ける。
けれど、それは九条の前だからかもしれない。
中瀬の様に自分とふたりきりの時には別の顔を見せてくれるのだろうか。
「宜しくお願いします」
そんな事を思いながら祐羽は丁寧に頭を下げた。
それからある事に気がつき「え?専属ですか?!」と首を傾げた。
「ええ。柳は運転技術も確かですし、武術の心得もありますから月ヶ瀬君の身を守るには充分役立つ男ですので、安心して下さい」
車が静かに走り出す。
助手席に座っている眞山が前を向いたまま続ける。
「中瀬だけでは万が一の時に不安ですからね。まぁ、貴方に害が及ぶ事は無いでしょうが、それでも可能性はゼロではありませんので」
害が及ぶ…それはヤクザという仕事をしている九条と一緒に過ごしていく中で一生付いて回る不安ごとだった。
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