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旭狼会と紫藤組の男
だだだ、誰?!!
声が聞こえて、自分達以外も居ると知った祐羽は一気に緊張に包まれた。
元々人見知りもあるが、それだけでなく入り口の強面の男達でドキッとしているのに中には想像通りだろう、この男達のボスである男が居るに違いないからだ。
九条の様子はいつもと変わらないので判断は難しいが、眞山や中瀬は特に緊張していないことから敵対してはいない事だけは分かる。
とはいえ、祐羽からすると得体の知れない相手と今から対面するのだと思うと顔が強張るのも仕方なかった。
あの一件以来、旭狼会以外のヤクザ関係者と対面するのは今回が初めてになる。
「……、ゴクリ」
祐羽は自分の手を握りしめた。
きっと組長さんがいるんだ。
怖い人だったらどうしよう…。
正直いうと帰りたい。
どんな人だろうか?
声の感じからして、まだ若そうだ。
けれど、祐羽の頭の中には強面の親分がどっかりと椅子に座っているシーンが浮かび、早くもホテルに戻りたくて足取りが重くなっていく。
「どうした。入れ」
九条が漸く祐羽の様子に気がついて振り返ると声を掛けた。
九条の気遣う眼差しに促されて意を決した祐羽は、おずおずと個室へと足を踏み入れた。
とはいえ、視線はすがるように九条の靴だけを見つめながら。
勇気を振り絞って個室に入ると一気に静寂が包み込み、祐羽は視線を感じて泣きたくなった。
全員の視線が集中している事が分かり緊張が高まっていく。
み、見られてる…。
思わず九条の背中にスススッと隠れてしまう。
縮こまって半身隠れた祐羽の頭に九条の大きな手が乗せられた。
九条さん…。
ホッとした束の間、相手の男の声がした。
「おいっ、一臣。何な~ソイツは?!」
「!!」
自分の事だと分かり、祐羽の肩がビクッと跳ねる。
「紹介せぇや」
心底訝しい感情の籠った強目の方言口調に、祐羽は今度こそ涙がチョロリと出てしまった。
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