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その迫力に、祐羽の片方の目からは勝手に涙が押し出された。
うっ、ダメだ。
泣いたらダメだと慌てて目を擦った。
そんなつもりは無いのに、涙脆い自分の弱さに呆れてしまう。
でも、怖いものは怖いのだから仕方ない。
そんな祐羽を見て今度は九条が怖い声で相手に返した。
「隆成。コイツを怖がらせるんじゃねぇ…」
「!!?」
殆ど聞いたことのない程の低音に思わず涙も引っ込み、祐羽は目を丸くして九条を見上げた。
怖く無いけど、怖い。
九条が珍しく感情を表している。
それも怒った感じだ。
「おいおい、一臣。俺よりもお前の声の方が怖いってよ」
「…すまん」
指摘された九条がスッと怒りの感情を引かせて祐羽に謝ってくる。
驚きはしたものの本気で怖いとは思わなかったので、祐羽は首を左右に振った。
「い…いえ、大丈夫です」
そう言うと、九条に背中をポンポンと軽く叩かれた。
それだけで、いつもの九条と変わりないんだと一気に安心する。
「お前が泣かすからだ」
そこで漸く九条が怒った理由が分かった。
九条さん、心配してくれたんだ。
「九条さんっ、…ありがとうございます。その…緊張して勝手に涙がちょっと出ただけなので」
「そうか」
頷きつつも実はまだ緊張は続いていた。
何故なら相手からの視線をヒシヒシ感じているのと、まだその人物の顔さえ見ていないからだ。
一体どんな人なんだろ?
怖い人だったらどうしよう…というか、もしかしてここでお昼ご飯食べるの?
「お~い、九条の大切な可愛い僕ちゃーん」
「!?」
えっ、ぼ、僕?!
思考がグルグルしている祐羽に男から声が掛けられた。
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