旭狼会と紫藤組の男

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その笑みは九条とは違って表情が分かりやすい。 楽しくて仕方ないといった様子だ。 「祐羽って言うんか~可愛い名前しとんじゃなぁ。ん…?一臣の愛人だっけ?」 愛人の言葉にピクッと反応した九条に気がついて間違いだと紫藤が慌てて訂正する。 「違った、恋人か。わははっ、すまん!」 この人、九条さんの恋人が男の僕でも気持ち悪がったりしないんだ…。 その事を不思議に思いながらも有り難く頭を下げた。 「あ…月ヶ瀬祐羽です。宜しくお願いします」 「おっ、丁寧だし、いい子じゃな~」 紫藤が身を乗り出して手を伸ばし祐羽の頭を小さい子にするように撫でる。 すると、すかさず九条が紫藤の手を勢いよく払い落とした。 「痛ぇなぁ…」 「コイツに触るな」 九条の返事に苦笑いしている紫藤は、どうやら優しい男らしい。 ヤクザという肩書きと方言、あと顔がイケメンなせいで多少緊張はするが、これなら少しずつ馴染んでいけそうだと祐羽は安堵した。 「相変わらずその無愛想、なんとかならんのんか?つっても、小さい頃から知っとる俺でも読めん事が多いお前の気持ちが今はハ~ッキリと読めるぜ~」 ニシシッと、ガキ大将が笑うように紫藤がニヤニヤする。 そんな視線を受けた九条はというと、不機嫌そうにジロリと相手を睨みつけた。 誰もが固まる肉食獣の睨みも気にならないらしく飄々としている。 どうやら紫藤も同じ肉食獣に部類している様だ。 ハラハラする祐羽をよそに、紫藤が唐突に切り出した。 「それよりも腹減ったし、飯にしようぜ。おいっ、律」 「はい」 呼ばれて返事をしたのは、紫藤の斜め後ろに待機していた男だ。 緊張、そして紫藤の容姿と言動に気を取られていた祐羽は、そこで漸く室内に残る相手側の組員に目を向けた。
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