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わたしの国は、とてもちいさくて貧しい。
大陸の端、北西に連なる山々の谷間にあっては、広い農地も牧草地もなく。
少しの家畜と少しの家禽と、少しの麦が育つだけ。
山肌にめずらしい果樹があったけれど、その甘美な果実はあまりに繊細すぎて、そう遠くまで交易に出すこともできなくて、国に富をもたらす作物とはなりえなかった。
この国を成り立たせる《よりどころ》となっているのは、唯一、領地の端、東にある銀鉱だけ。
けれどそこも、近隣の大国からの絶え間ない侵略の的となっており、おじいさまもお父さまも、心を安らがせて眠れる時が、どれほどおありだったろうと思う。
まだそれほどお年を召していらしたわけでもないのに、お父さまが卒中で、ごくあっけなくお亡くなりになったのは、そんな心労がたたったからなのだろうと。
口には出さなくても、重臣たちはみなそう思っていたようだった。
――そして。
おそらく御自分が思っていらしたよりもずっと早く、お兄さまは王位を継いだ。
*
数日前から、急に空気が冷たくなった。
この国ではいつも、冬は突然にやって来る。
手紡ぎの分厚いケープを頭からすっぽりとかぶり、わたしは部屋を出た。
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