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一年で一番、太陽が遠くなる日が近づいてきた。
貧しいこの国では、王たるお兄さまを筆頭に、臣、軍人に民たち皆が、つましく静かに暮らしている。
けれど、冬至の日ばかりは別だ。
小鹿を何頭も屠り、果物と一緒に香ばしく焼き。
秘蔵の甕を開けて、たらふく酒を飲む。
そして古くから。
その日だけは、男女のまぐわいにおいて、何があっても許されることになっていた。
冬至が近づくと、城の中の空気も華やぎ始める。
そんな時だった、ひとりの老人が門番に入城を乞うたのは。
わたしは宴の準備にかかわることを、手伝うことはできなかった。
わたしが「王女」だから、身分が高くて、そんなことをさせられないのだというのが、表向きの理由。
でも本当は違う。
わたしが不浄だから。
だから、酒や食物にかかわることが、許されないのだ。
厨房や貯蔵庫での冬支度の場へと足を踏み入れることが、わたしには許されないのも、それと同じ理由からだった。
*
「ひいさま、ひいさま……」
城中が 浮足立って冬至の宴の準備に取り掛かる中、わたしは、ひとり自室にこもって、うずくまっていた。
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