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6  一年で一番、太陽が遠くなる日が近づいてきた。  貧しいこの国では、王たるお兄さまを筆頭に、臣、軍人に民たち皆が、つましく静かに暮らしている。  けれど、冬至の日ばかりは別だ。  小鹿を何頭も屠り、果物と一緒に香ばしく焼き。  秘蔵の甕を開けて、たらふく酒を飲む。  そして古くから。  その日だけは、男女のまぐわいにおいて、何があっても許されることになっていた。  冬至が近づくと、城の中の空気も華やぎ始める。  そんな時だった、ひとりの老人が門番に入城を乞うたのは。  わたしは宴の準備にかかわることを、手伝うことはできなかった。  わたしが「王女」だから、身分が高くて、そんなことをさせられないのだというのが、表向きの理由。  でも本当は違う。  わたしが不浄だから。  だから、酒や食物にかかわることが、許されないのだ。  厨房や貯蔵庫での冬支度の場へと足を踏み入れることが、わたしには許されないのも、それと同じ理由からだった。  * 「ひいさま、ひいさま……」  城中が 浮足立って冬至の宴の準備に取り掛かる中、わたしは、ひとり自室にこもって、うずくまっていた。     
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