30人が本棚に入れています
本棚に追加
他国の――それも王族を娶るとなれば、后妃(正妻)として以外、輿入れはありえないのだから、慎重の上にも慎重を期さねばならない。
ならば、后妃としてではなく、まずは世婦、夫人の類として、国の内のある程度の身分の女を城に入れる方が話が早い。
首尾よく女が孕めば、それはそれで歓迎すべきことでもある。
こんな小国の身では、他国から嫁してきた正妻との間の世継ぎは、厄介事を引き起こしうる可能性も、また大きい。
他国の権力者たる外戚が、なにかと政に口を出してくるような事態も、大いに懸念されうる。
つまりペリペは、世婦や夫人を城に入れるにあたっての費用の是非を、王の御前会議の議題として持ち出したのだった。
これに関し、王への従前の根回しは一切なかった。すなわち、これは王にとっては寝耳に水の提案だったのだ。
だが、会議の席で、王は微塵の狼狽も見せなかった。
「お膳立て」は、ペリペによって、すでに済ませられてしまっていることを――すなわちこの件に関し、重臣たちはもう、全員一致で賛同する手はずとなっていることを、聡い王が瞬時に察し取らないわけもない。。
王はペリペが持ち出した提案に、軽い頷きのみで応じた。
そして、「適宜の措置を」と短く言い置き、王座から立ち上がった。
最初のコメントを投稿しよう!