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冬至 III 4
4
あれは、冬至の宴の直後のことだった――
まさに、冬のただなかだった。
けれども、その骸が城の内に運び込まれるとすぐに降り出したのは、雪ではなく雨だった。
城の裏庭。
下働きもあまり立ち寄らぬ一角。
骸が横たわっていたのは、ちょうどそんな場所だった。
薄い絹の敷布を身体に巻きつけただけの姿で、異形と蔑まれていた王妹は、壊れて捨て置かれた人形のように、冷たくこと切れていた。
冬至の宴が終わるのは、翌日の昼近くだ。
それから国中は眠りにつき、いつもの暮らしが戻るのは、次の日の朝となる。
王妹の骸が見つかったのは、その日の遅い太陽が昇り始める時刻だった。
王妹が異形のものであったことは、城の内のものにとっては暗黙の了解であった。
だが民たちの中でそれを知っている者は、ほんの一握りに過ぎない。
異形の姫の生まれにはいわくがあった。
そのように「おぞましく」生まれついたのは、その呪いだと。
父王は娘を責めた。
そうされる理由など本当は何ひとつなかったにもかかわらず、娘は咎を科せられた。
そして異形の姫の存在、生まれのすべては、ひた隠しに隠されていた。
同じようにしてその死もまた、まったく同じに、ひっそりと葬りさられたのだった。
悲嘆の泣き声を上げたのは、めのとの老婆ただひとり。
その姿を、王の副官ペリペがごく苛立たしげに睨め付ける。
兄である王は、言葉もないまま、あわれな妹の亡骸を見下ろしていた。
その首筋を、気高くも真っ直ぐに伸ばしたままで。
王妹がなにゆえに、命を落としたのか。
おそらく城の階上から庭へと、あやまって落ちたのだろうと、そう結論付けられた。
ただ、ひとつ不可思議なこともあった。
王妹の骸の内腿には、鮮血がこびりついていた。
何者かに、無体な仕打ちをされたのではと。
普通であれば、そんな疑いが持ち上がるはずだ。しかし、そのような疑念は一切、取沙汰されなかった。
王妹は、女陰を持たないのだ。
なればこそ、呪いの子と蔑まれた人生だったのだから。
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