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冬至 III 9
9
気を失っていたのは、おそらくそれほど長い間ではなかったのだろう。
ペリペは、そんな風に考えながら起きあがる。
いまだ太陽は昇り切っていなかった。
薄明りの中、床ではまだ、王が眠り続けている。
その横に、王妹が横たわっていた。
ひどく不自然な姿勢で。
痛いような静寂。
ペリペは指を伸ばし、王のくちもとにそっと手をかざした。
かすかな息遣いとぬくもりを感じとる。
そしてペリペは、その手を異形の姫の鼻先へと動かす。
だが、確かめるまでもないことは解っていた。
ペリペには、転がる異形の死顔が、その隣で眠る兄たる王の寝顔そのもののように見えた。
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