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 わたしは逞しい腕に抱き上げられる。 「どうしたのだ、心配したぞ。怪我でもしたのか?」  わたしを甘やかす声。  頬に触れる掌は、暖かい。  自分はこんなにも凍えきっていたのだということを思い知らされる、そのぬくもり。  わたしは、お兄さまを見上げて微笑む。 「王よ、そちらですか?!」  雨音を縫ってペリペの声がした。 「そうだ……姫を見つけた。馬を連れて、早く来い、ペリペ!」  お兄さまの声が、身体の奥に響いてくる。  触れあった胸と胸を通じて、暖かく流れ込んでくる。 「足もとが悪すぎます、王、これ以上、馬は近づけませぬ」  強まる雨音に負けじと、ペリペが声を張った。  嫌い、あの声は大嫌い。  わたしは、両耳を覆いたくなる。  ――お兄さまの声だけを聴いていたいのに。  お兄さまがわたしを、肩へと担ぎ上げた。そしてペリペの方へと向かって歩き出す。 「私の馬の方が大きい。王よ、姫は私が」  言って、ペリペがお兄さまの腕から、わたしを引きはがした。  荷物のようにして、わたしは馬の背に押し上げられる。   続いて、ペリペが鞍に跨った。  ペリぺは、脇の下から腕を通してわたしを起こし、自分の胸へともたれさせる。  お兄さまの馬が、先に立って走り始めた。     
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