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雪を待っていた。
十二月が終わろうとしている。手袋をしていない手が、上手く動かない。吹きかける息が妙に熱いけど、その熱はすぐに消えてしまう。スマートフォンにいくつかのメッセージが届いているみたいだけど、ちょっと見られそうにない。
もうずっと、ここにいる気がする。
外に出た理由は、初詣をしようと誘われたから。近所の神社に向かって歩いてた。
顔が固まってしまいそうな空気の中、ふと見上げれば、厚い雲。そういえば、雪が降るかもって天気予報で聞いた気がする。そんなことを思い出して、人の行きかう道の端、立ち止まって、雲を見ている。
どうしてこんなことをしようとしたのか、自分でもちょっとわからない。だけどもし、もしも年が変わる前に、雪が降ったなら。そんな賭けを、一人でしてる。
凍る息、人の声。雲の上の星空に流れているかもしれない、見えもしない流れ星に、願いをこめる。
どれくらい経ったんだろう。人がまばらになって、音が止む。いつの間にかうつむいていた顔をパッと上げてみたけど、そこにあるのは白い吐息だけ。しだいに遠くから騒がしさがやってきて、流れ星の不在を教えられる。
スマートフォンが震えてる。取り出して、少し迷って、耳に当てる。
「はい」
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