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「チクショー。
バケモノめ」
オレは壊れゆくドアを見ながらつぶやいた。
そしてオレのとなりに立っていた祥子が、震える体でオレに抱きつき、今にも泣き出しそうな声でオレに話しかけてきた。
「宏介、強く抱きしめて。
私、怖いよ……」
オレは祥子を強い女だと思っていた。
でも祥子は、死の恐怖に直面したとき、誰よりも弱々しくて頼りなかった。
「私ね、ちゃんと恋愛をしたこともなかったんだよ……。
好きな人に、まだ好きって言えてなかったんだよ……」
祥子はそこで言葉を区切ると、ささやくような声でオレに言った。
「今まで言えなかったけど、私、宏介が好きだったんだぁ……」
狂犬グルーミーの体当たりに耐えきれず、ドアは今にも壊れそうだった。
オレは弱々しく震えている祥子を強く抱きしめ、祥子に自分の思いを伝えた。
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