第3話 派遣を派遣する……だと?

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「俺の頭にあった問題が、あれを見て一気に繋がったんだ」 「どう、繋がったんです?」 「品質会議のときはあえて説明しなかったが、聞く準備はいいか?」 「異物が入っているのは溶剤だと思ってましたが、違うんですか?」 「違う。それならあの対策はあまり意味がない」 「あ、そうか」 「あのフクレの中身は溶剤だ」 「はい?」 「犯人は溶剤だ。大事なことなので2回言ったぞ」 「犯人はわかっていますが、溶剤の中のなんですか?」 「溶剤の中の人などいない」 「いや、そういう話じゃなくて」 「溶剤が多いとどうなる?」 「乾燥しにくくなりますね」 「そう。材料の中に残るだろ」 「でも、それはあり得ません」 「ふっふっふ。どうしてだ?」 「なんですか、その不気味な笑いは」 「そう言うと思ったからな。俺もずっとそう思っていた。だからメカニズムが大切なんだ」 「あの材料は120度で30分間乾燥させたあと、1,600度で焼成するんですよ? 沸点が低い溶剤なんか残るはずがないでしょう」 「じゃあ、なんで乾燥なんて工程を入れてあるんだ?」 「え? そ、それは……知りません。技術が設定した工程なんで」 「それを思考停止って言うんだぞ。しかし、技術だってそれを知っているくせに思いつかないんだから、罪は同じだがな」     
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