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「なんだ、たかがそんなことだったのか。いままで鷹栖はいったいなにを見てたんだ。現場では普通にやっている作業だろ?」
と、それまで黙って聞いていた製造部長の大野が大声で言った。今年で50才になるらしい大野は、小太りで中背、声だけはやたらでかい。東大卒だそうだが僕がこっそり無能の烙印を押した人物だ。
そいつが、まるですべての原因が製造課長の鷹栖にあると言わんばかりの物言いをしたのでカチンときた。
僕は、自分ではなにもしないくせに偉そうなことだけを言う奴が大嫌いだ。だからこういう場面では黙ってはいない。
「この問題が初めて問題化してから4年ぐらいになるそうですね。鷹栖さんが製造課長になられたのは1年ほど前のことです。責任を問うのであれば、その前の3年間の人にも同じように問わないといけませんが」
その中にはお前(製造部長)も入っているだろうが、とまで言わないが。
「し、しかし、こんな簡単な問題であんたに金を払うこちらの身にもなってくれよ」
「そんな簡単な問題を4年も放置したのは、製造部長の責任ではないのですか?」
「うっ。ぐ」
お前は鵜飼いの鵜か。
「こんなことに気づくからこそ、私の仕事が成立するんですよ」
「じゃ、じゃあこれからはどうするつもりだ? 原因がわかりました。それだけじゃ良くはならんだろ」
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