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「その通りです。では次に私からの改善案を発表します。この慢性化した不良は、ロットごとのばらつきはあっても月平均では3%ほどコンスタントに発生しています。これを0.5%程度にまで下げようという案です。こちらの一覧表を見てください」
「なんだ0にはならないのか」
と大野が言う。再びカチンときたので断言する。
「なりません。希釈という作業は必須です。これをなくすのであれば、材料を根本的に見直す必要があります。それは私の仕事ではありません。これからお話する対策案は、希釈量を最小限にするための方策です」
そんなことまで用意してあったのか、という渋柿を思いっきりかみ砕いたような部長の顔を横目に僕は自分の案を説明した。
「これによって効果金額は月額約120万円になると考えられます。他に質問などあれば受け付けますが」
さっそく食いついてきたのは鷹栖だ。
「対策結果はいつでますか?」
「すでに小ロット試験を入れています。リードタイムから考えると、約1週間で結果がでます。その結果を見てから工程変更申請書を発行してQC工程表を改訂しましょう。そこまで私がやります」
工程変更申請書とは、作業工程を変更するときに発行しないといけない書類である。いくら良くなることであっても、どんな権限を持っている人間であっても、勝手に作業の変更をしてはならない。
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