モノローグ3

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 拷問を行うのは、なんと幹部クラスの小島満本人なのだ。その性格は残虐非道そのものと言っていい。暴力が大好き、人をいたぶるのが大好きなのだ。さらに自身の巨大な体躯にも自信があるようで、不用心にも拷問の際奴は一人きりだという。(一人で楽しみたい趣味、みたいなものなのだろうか?)  だからこそ紅の命は、イカサマをして敢えて奥の部屋に連れていってもらえ、ということなのだ。少なくとも、そうすれば天草組とは何ら関わりの無い可哀想な客に現場を見られずに済む、という狙いがそこにはある。  これをつつじと一緒にやる守にしてみれば、随分と大雑把で楽観的な作戦を練ったものだと呆れた心持であったが、ともあれ、一般的なセキュリティ(セコムとか)は万全のマンションであるからして、一番楽に、一番無理なく小島満の顔を拝む方法ではあった。  強行突破で忍び込むならば、最上階の部屋が舞台なだけに、また、セキュリティをわざわざ掻い潜るのは行きも帰りも面倒で、骨が折れる仕事になってしまうのだ。  逆に客を装う分にはこちらにアドバンテージがある。なぜなら、小島満の上司である天草恭介がこちら側なのだから。  守が入口で部屋番号をプッシュすると、インターホンからしゃがれた男の声が響いてきた。 『はい、どちら様?』 「山下と申します」 『ああ、ボスの紹介の方かい、どうぞ』  ここで名乗った《山下》は勿論偽名である。事前に天草恭介の方からその名でアポイントメントを取っておいたのだ。そもそもこのマンション麻雀は不逞の輩を入れない為にも会員の紹介制になっていて、それは金持ちから金持ちへ、金持ちの間だけで噂を広める為であり、また、刺客や警察からの防衛のための制度であった。  しかしまさか、組の関係者が、しかも上司が、刺客を送り込んでくるなどとは夢にも思うまい。これが守たちのアドバンテージである。  ロックされていた自動ドアが開いた。守とつつじはマンションの中へと足を踏み入れる。 「ねぇお兄ちゃん」 「なんだ? つつじ」 「今日はお面被らなくていいの?」 「ああ、今日はいいんだよ」 「そっかぁ」 「つつじ、僕が頼むまでは大人しくしているんだぞ」
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