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空から、全身に炎を纏った人間が……人間と言っていいのだろうか、『ソレ』は地上に炎を放ち人間を焼き殺している。
ビルの上からは、その光景がよく見渡せた。逃げ惑う人間、体に付いた炎でもがき苦しむ人間……どうしてか、私はその光景を大声を上げて笑っていた。
そうだ、屋上に来た理由はここから飛び降りるからだった。死んで、私を強姦した会社の奴等に後悔させるため。……後悔なんてする訳ないか。
ーーこの世界にいるだけで吐き気がする。
この世界から逃げ出そうとする前に『ソレ』が世界を終わらせようとしている。私が願ったから? 願い続けても、朝起きれば同じ景色。だから、死ぬことを選択したんだ。なのになんで今更……。
ーーどうでもいい。
この世界は消えて無くなるんだ。私の願いは叶った。みんなで死のう!
「ざまぁみろ! 全部壊しちゃえぇ!!」
その声が届いたのだろうか。『ソレ』が私を見ているような気がする。いや、見てる……。『ソレ』はこっちに何かを向ける。
「剣?」
轟々と燃える剣から炎が放たれる。逃げ惑う人間に夢中で気にしていなかったけど、炎は手からではなく、手に持った剣から放たれていたのか。
全身に、熱さよりも痛みが襲い掛かる。どうしてだろう。死ねるというのに、体が反射的に炎を払い退けようとする。
ーー生きたい?
まさか、そんなはずがない。何故、悲鳴が上がるの? 何故、涙が溢れるの? わからない。
ーー生きたい!!
「死にたくない!!!」
いつの間にか、そう叫んでた。アイツらが死ねばよかったんだ。そうすれば、この気持ちも少しは晴れていたのに……。
お願い。どうせなら皆殺してよ。世界を終わらせて……。
『世界を創り直せ』
頭の中に声が入ってくる。瞬時にその声が『ソレ』だということがわかった。
『我が名はスルト。暇潰しに世界を終わらせに来た。だが、ただ終わらせるだけでは、これからがつまらない。我はお前を生かし、この世界をどう創るか見てみることにする』
私の……世界……?
目の前が霞んできた。意識が薄れてく……。
そうだ、これは夢だ。起きればまた元通り……。
起きたら、死のう。
ーーこうして世界は炎に包まれ、悲鳴とともに消滅した。
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