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世界が消滅して数日、数日前まであった建物も、今では消えて平地と化していた。
殺風景の平地に倒れている者が意識を取り戻すと、ゆっくりと体を起こした。全身火傷を負った者の顔からは男女を区別出来ないが、ふっくらとした胸からは、その者が女として見ることが出来る。
「……ここは……」
見慣れた景色とは一変していることに恐怖を抱く。すると暫くして、意識が無くなる前の出来事を、スルトという何かの言葉を思い出す。
「世界を……創る……」
戸惑いながらもフラフラと歩き出し始める。突然、片足に衝撃が走り、前のめりに倒れる女。振り返ると、十五センチほどしかない身長の男が立っている。男は黒いマントで身を覆い、そのマントは辺りと一体化しているため、見渡した時に姿を見付けることが出来なかった。
「……スルト?」
ふと、頭に浮かんだ名前を口にするが、その男がスルトではないことは瞬時に分かった。記憶にあるのは、轟々とした炎で身を覆う、剣を持った人物だ。だいたい、小さすぎる。
「スルトを知っているのか?」
「水……水を……」
返答よりも先に水を要求する女を無視し、男は急に走り出した。その様子を目で追っていくと、少し離れた所で身を伏せ、そこに何もないというほどに殺風景と一体化させた。
「水……」
「黙れ、巨人!」
遠くから、地形が波打つように蠢く光景が見える。それを見つめていると、それが先程の男のようにマントを羽織った小人達だと気付いた。
「逃げろ! 殺されるぞ!」
その大群を前に、男は必死に呼び掛けるが、女はピクリとも動こうとはしない。むしろ、その大群に向かってフラフラと歩き出した。
互いにある程度の距離を取ると、動きを止め様子を窺う。なにやら小人達は、小さな突起物を槍の代わりとして女に向けている。
「水を……ください」
「貴様のような者にはやらん! 憎き巨人族め!」
どうしてか、女に敵意を剥き出しにして、今にも攻撃を仕掛けて来そうな雰囲気を漂わせる。
女が頭を下げると、緊張の糸を張っていた小人は、それを攻撃と勘違いし一斉に槍を投げる。その痛みから体勢を崩し尻餅を付く女。
「槍を拾って、突き刺せぇー!!」
それを機とし、一斉に飛び掛かり襲い掛かる。
「痛い! やめてぇ!!」
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