アレ

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可笑しな現象であるが別に不思議って程じゃない。眠らないようにと俺はコカの葉を噛んでいたから脳みそがガンギマリしていたし、ガキの頃にピンクの妖精と遊んだ夢を見た俺には不可思議な現象が起こっても大して驚かない耐性みたいな物があって、さして脳内のドーパミンの分泌量は変わらない気もしている。それによくよく見れば空には太陽が五つも浮いてるじゃないか。夜なのに昼みたいに明るいのも頷ける。しかもほわんほわんってな音まで聞こえてくるじゃないか。こりゃ太陽というより宇宙船みたいじゃないか。ライクアスペースシップ。 「ウー、こいつはクレイジーだ」 俺はそんな益体もない感想を口にしながら珈琲を啜る。すると五つの太陽が左右二つずつに分かれ始め、中央の一つが上にすーっと昇っていく。まるで動物が口を開けたみたいだ。おいおい、チミ達はチョウチンアンコウか何かかい? 俺がコカ葉噛み噛み珈琲を啜っていると、どこからか声が聞こえてきた。 もちろん「じょいやさ、じょいやさ」や「イアイアハスター」なんて不気味な声じゃない。鈴を転がしたような、耳に心地のよい声だった。 驚く事にしかもそれは俺の名前を呼んでいる。一体なんだっていうんだ? 光の中から大層な別嬪さんが駆けて来る。 「flkgjariotjkifbjkvja@piofj」 俺の下にやって来た別嬪さんはそんな意味不明な事をいうと俺の乗っていた車の扉をバクンと素手でぶっ壊して俺に抱きついて来るではないか。俺が呆気に取られてぽかんとしていると、その別嬪さんはハッと我に帰って俺から二歩はなれ、恥ずかしそうに居住まいを正すと、こほんとわざとらしく咳をついた。 「失礼しました。翻訳ソフトを起動するのを忘れてました」 「はあ……」 「さあ行きましょう。二十年前の約束を叶えるために!」     
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