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ティーチウーマンは今日も胸を強調したピッチピチのボディスーツを身にまとい、ぼくを教室へといざなってくれる。
お父さんが口癖のように、
「なあヒデオ、父親参観はまだなのかい?」と聞いてくるのも、きっとこのティーチウーマンに会いたいからにちがいない。
ティーチウーマンが教室の戸をガラリとあけると、仕込まれていた何かが上からふってくる。この場合、人間の生徒が教師に仕掛けるものといえば十中八九が黒板消しだろう。
けれども、こいつらはちがう。
身をすくませたぼくにティーチウーマンがおおいかぶさり、落ちてくる何かを前腕のプロテクターで防御する。
爆発。
粉塵の舞う中、ティーチウーマンはぼくに「ケガはない?」と声をかけてから、キッと芝居がかった鋭い視線を教室へ向けると、大袈裟な前まわり受け身をとりながら突入して行った。
「いったい誰なの? こんな卑劣ないたずらをしたのは!」
パラパラと瓦礫のつぶてが音をたてる中、オネストマンが手をあげる。
「はい、ティーチウーマン」オネストマンは後方にすわっているウェポンマンを指さす。「彼が、新しい武器の実験だ、と言って仕掛けました」
「ありがとう、オネストマン」ティーチウーマンはにっこりとほほ笑んでウィンクする。「相変わらず正直なのね。さすがだわ」
「正直っつーか、単にチクっただけじゃねえかよお」ウェポンマンが声を荒らげる。
「おだまり!」ティーチウーマンが身がまえる。「か弱い人間をおびやかす卑劣な悪は、たとえPTAが許してもわたしが許さない!」
「スーパーヒーローに対して“悪”とはご挨拶だなあ。ケガをしないように、塩化ビニルと低温花火を使った、いわばダミーの爆弾ですよ?」ウェポンマンがレーザー銃を手もとでくるくるとさばきながら弁解する。「いかに小さな衝撃で破裂するかの実験であって、決して殺傷目的ではありませんから」
「あらそう?」ティーチウーマンが吹き飛んだ出入り口をバスガイドのような仕草でさししめす。「そのわりにはずいぶんな破壊力だこと」
「まあまあ、ティーチウーマン、ウェポンマンもこう言ってるわけですから」ロイヤーマンが割ってはいる。「ここはひとつ、未必の故意ということで水に流していただけませんか」
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